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言葉は意味を持つ記号である一方で、見聞きする人と異なる文化を持つ人にとっては全く意味を持たないという側面を持っています。そのため、解読できない文字列を見る行為にはさまざま視座が存在するのではないでしょうか。
本作は、日本人にはカタカナに、外国人には英語に読めるフォント「Electroharmonix」を用いた、個人の視覚認識の間にある隔たりに着眼したインタラクティブコンテンツです。VR空間内では、宇宙のような空間で浮遊・変遷する文字が見られます。人為的なものである「文字」を見るための、擬似的な「空を見上げる」という行為は「言葉」と「自然」とをリンクさせるための絡繰です。また、VRによる「実世界とは異なる空」は、鑑賞者個人を人種や国・特定の地域と隔て、場所性を取り除いたフラットな視点での鑑賞を促しています。
テキストには、日本語の50音を全て使用してつくられた詩である「いろはうた」と、アルファベットの文字をすべて使用してつくられた「パングラム」が引用されています。どちらもフォントの見本などでよく見かける有名な文章の1つで、内容は異なるにも関わらず社会の中では同じ役割を果たすものという意味でリンクする2文と言えるでしょう。言葉は時に、文字として図形であり、声として音であり、発された人間そのものです。日本語/英語といった言語間の違いのみならず、実に多様な在り方でこの世界に浮遊しています。言葉という概念の持つ限定性や多様性が各所で響き合っている実世界の矛盾を体感するための試みとして、この装置は制作されました。
wandering words/wondering worlds
VR art -2017
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